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溺れる恋は藁をも掴む
第6章 満月の夜に
そんなたわいのない話で盛り上がり、
ホロ酔い気分で居酒屋を出た。

会計の時、
いち早く伝票を取って、
レジに向かうアキを止めた。

「今日は、アキを労いたいから、
私が払うよ」

ダメだよって言うアキに、

「最高の理解者なら、
こうして、アキを労う事も必要でしょ?」

そう言うと、

「有り難う」
って、アキが申し訳なさそうに言う。

「いえいえ。
この間の卒業式のお礼も兼ねて。
そういう気持ちのない女ってダサいでしょ?」


「わるいな。
なら遠慮なく、
ご馳走さん」
そう言って、
アキは笑う。



それから、噴水公園まで並んで歩いた。


空を見上げたら、
満月が高い位置にきていた。

このまま時間が止まればいい‥‥‥
まだ‥‥一緒に居たい‥‥‥

大きな噴水の前。

「遅くなったから送るよ」

そう言うアキ。





「アキ‥‥‥
もう少し、一緒に居たいって言ったら、
迷惑かな?

あっ‥‥‥今日は、お父さんの命日だし、
アキは仕事だったし、疲れてるよね。
そういうとこ気が効かなくてごめん」





アキはそっと私を抱きしめて、
囁くように言ったんだ。




「こんな日だからこそ、
一緒に居たい。
満月の夜は、
男は狼になるんだよ?」

「狼を求めちゃダメ?」

「ダメなわけないじゃん。
むしろ、そうしたい」


顔を見合わせ、
照れ臭い二人は笑う。


満月の夜に私はあなたを求めた。
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