この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
大きな瞳に映るのは
第22章 彼の思考回路

『 っ… ?! 』
なんとか資料はぶち撒くことなく
私の腕の中に納まっていた。
「 すっ … すいま
『 あれ …? 木下じゃん 』
顔を上げるとそこには蒼真の姿があった
「 なんだぁ。蒼真かぁ~ 」
ビクビクとしていた心臓が一気に落ち着く。
怖い先輩とぶつかったりしたら
それこそタダじゃ済まされないと脳裏をよぎったから。
『 木下。ちゃんと前見て歩けよ
この前も橘にぶつかってただろ。 』
「 んう … ごめん … 」
少し怒ったように蒼真が私に言葉を投げる。
前は向いているんだけど。
なんて思いながらも申し訳なくなり
俯き加減で謝る。
『 … ? 木下音夢? 』
そしてその声は突然蒼真の後ろから現れた。
遙だ。
きょとんとした表情でこちらを見ている。
口元には棒付の飴玉。
そして蒼真に近づくと、蒼真に右手を差し出した。
『 これ!ちょーうまいんだけど! 』
『 何? 欲しいの? 』
『 そう!まじうまい! 』
目を輝かせながら蒼真に頼み込む遙
本当に小学生みたいだ。
『 今日はこれがラス1だから 』
『 さんきゅーっ! 』
満足げに遙が飴玉を受け取る
少しだけ羨ましいな、なんて。
じゃあ俺購買行くから、と蒼真はその場から離れて行ってしまった。
蒼真の後姿を見送る。
『 木下音夢。それ。どこもってくの? 』
ハッとして後ろを振り返ると
大きな瞳で私を見つめる遙と目が合う。
飴玉を口の中で転がしているのがわかる。
「 あ … これ視聴覚し …
『 へぇー 俺も今から視聴覚室 』
「 え? なんで? 」
『 はい、これ 』
私の言葉を無視して遙が差し出したのは
さっき蒼真からもらった飴玉だった。
「 え?いいの?くれるの? 」
『 食わないの? 』
「 ほっ … ほしい! 」
私の大好物だ。いらないわけなんてない。
でも資料で両手が塞がっている。
どうしようかとその資料に目を落とした。

