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大きな瞳に映るのは
第25章 勘
時計の針は10:00を指していた
やばい、やばいやばい …―
額に汗を滲ませながら
駅の階段を駆け下りる。
生徒会は10:00スタートなのに、
昨日深夜の音楽番組に
遙の好きなアーティストが出るということで
夜更かししたら寝坊してしまった。
奏先輩に、遅刻しますと連絡を入れたが
既読無視されていた。
( 絶対怒ってるよー… )
蝉がジリジリと鳴く真夏の日差しの中を
駆け抜ける。
行き交う女性陣は日傘を差しながら
優雅に歩いているが
今の私にはそんな余裕なんてない。
『 あれ?キノちゃん! 』
そう呼び止めたのは
楽器店員の神谷先輩だった。
「 あっ … せんぱっ 」
バイクに跨った先輩はヘルメットを外すと
私の様子を不思議そうに見る。
『 急いでる?乗ってくか? 』
先輩は私が急いでいるのに気が付き
後ろをぽんぽんと叩く、
「 いいんですか?! 」
思わず目を見開き声を張る。
ここから走っても学校までの距離はかなりある。
それにこの真夏の暑さに耐えられる自信がなかった。
バイクで乗せてもらえるなら
そんな道のりもあっという間に違いない。
『 もち!ほい!乗れ! 』
そう言って神谷先輩はヘルメットを座席から取り出すと私に手渡した。