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大きな瞳に映るのは
第25章 勘
ビクンと震えると
奏の手の動きは止まった。
そして私をじっと見つめる。
『 音夢、教えてください 』
そう口を開く奏の瞳は
真っ直ぐ私を捕えたまま離さない。
( 遙との関係を教えるなんて … )
出来ない。
たったそれ一択だった。
もしも遙に恋人がいなくて
私が奏よりも遙の事が好きだと
そう確信できたなら。
話してしまっても構わなかった。
けれど、こんな不純な関係を
口にできるわけがない … ―
「 奏先輩 … 」
涙目になりながらも
しっかりと奏の瞳を捕える。
眼鏡の奥の澄んだ瞳を。
さらっとした黒髪。
色白の綺麗な肌。
時折見せるふわりとした笑顔。
ちゃんと私だけを見てくれている彼が
彼こそが
私のパートナーなのだから。
私は彼から離れられない …―
「 レッスンを …
『 … はい? 』
奏が眉間にしわを寄せ
少し首を傾げたまま私を見つめる。
「 ピアノのレッスン … してもらってただけなんです … 」
咄嗟に私がだした答えはこれだった。
もうこれしかなかった。
私も遙も音楽科、たったそれだけの共通点。
理解してもらえる答えなど
これ以外、私と遙にはなにもなかった。