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手探りな絶望
第2章 派遣

「あ、はい

佐々木です
今日は、あの…」




あの女だ
間違いない


佐々木
いつの間にか
眼鏡を外していて

目の前の佐々木の
背格好は
あの時の女とそっくりだった



そして

やや
オドオドした声が

あの時のまんま




「あの時は…

あの時は
ありがとうございました」



えっ


み、み、認めた?



「お金も
お借りしたままで
でも本当に

ありがとうございました」




「あ、い、いや

いやいやいや
俺こそほんと
ほったらかしのまんまで

…大丈夫…でした?」





いきなり
深々と
頭を下げる
佐々木を見ていると


ちょっと
問い詰めたかった
俺の気持ちは
一瞬にして
どこかへ行ってしまっていた




当たり前だよな




あんな姿
見られた相手が
職場に居たら

驚いて動揺するに
決まってる


それに
あの別棟で
他の派遣の人がいる前で
謝れるわけねーよな



今頃そんなことに
気づいた俺は

女を
問い詰めたりする前に

その女が
あの日のことを
認めてくれたことに


なんだか
ホッとしていた

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