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兄の狂気
第9章 永 遠
「若々しかったな。たぶん俺らの3つは上だよ」
「えっ!?見えない!」
どっちも、大学生って言われても
絶対おかしくないくらい若かったのに。
「あんなおしどり夫婦、いいな」
「そうだね…」
3つ上…か。
お兄ちゃんくらいなんだな、あの2人…
…お兄ちゃん。
そう。
あの後あたし達は、戻ってきたお兄ちゃんに
引き離されそうになったけど、
あたしが哲平じゃなきゃやだって泣いて、
哲平や翔太くん、美音がお兄ちゃんを
説得してくれてようやく鎖が外された。
哲平もお兄ちゃんも傷だらけで、
あの後すぐに病院に行ったら、
哲平は右腕を骨折してて、
お兄ちゃんは右足を打撲していた。
あたし自身も、それからは大変だった。
あたしが心と身体に負った傷は相当なもので、
しばらく入院生活をすることになった。
…妊娠していなかったことが、不幸中の幸いで。
哲平を裏切ってしまった後悔と罪悪感から、
お兄ちゃんからの長期間の支配で培われてしまった恐怖から
男の人に触れられるのが怖くなり、
一時期精神科病院にもお世話になって…
数年間、治療を続けた。
その間哲平はいつでもあたしを思って傍にいてくれて、
その優しさと温かさに救われて、心が解されて…
元の自分を取り戻すことが出来た。
あたし達は別居することになり、
お兄ちゃんはあたしの前から姿を消した。
今、どこにいるのか分からない。
でも、毎年あたしの誕生日とお正月に
プレゼントが届くし、あたしと哲平の結婚式の
招待状の写メを送ったら、来てくれなかったけど
大きな花束が送られてきた。
いつか…いつか、和解する日が来るといいな…
そして翔太くんと美音は、
あたし達の少し後に結婚した。
デキ婚で、最近双子を出産した美音。
毎日たくさんの双子の写真が送られてくる。
辛いことを乗り越えて、
あたし達は幸せになることが出来た。