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◇afterword◇あとがき集
第9章 【新】先生、早く縛って
しかし、あまりにも頑ななヴィオラの態度にしびれを切らした領主がある日荒々しく抱くと、抗いながらも乱れてしまうヴィオラ。それまでの男の誠実な態度に心を許し始めていたヴィオラの、生まれながらの被虐的な心に火がついたのだ……愛のない嗜虐的セックスをすることもあった男は、ヴィオラを「愛奴」と呼び、愛のある調教の日々が始まった。男は決して自分の欲望のままにを抱くことはない。拘束具や鞭など…ヴィオラが望むもので快楽を与える男。調教はあくまでもヴィオラの心の充足に目的があるかのようだった。そしてヴィオラは身も心も男へ捧げるようになり、いつしか完全な支配関係の中に完璧な心の充足を感じていく。
そんな日々の中、ヴィオラが重い病にかかってしまう。医者の話では、静養するには暖かい海辺の土地での生活をするに限る、そうすれば命に係わるようなことはないだろうということだった。自分の土地を離れる訳にはいかない男は、海辺の町を治める、妻を亡くした叔父のもとへヴィオラを嫁がせることを考える。しかしヴィオラはそれを拒み、命を削ってでもそばにいたいと訴えた。
……一年後、ヴィオラは男の腕の中で息を引き取る。亡くなる前日まで男はヴィオラへの調教を止めなかった。それをヴィオラが望んだからだ。いつしか男は正常な判断ができなくなっていたのかもしれない……。そのことに男は、ヴィオラを亡くして初めて気が付いた。何もする気になれない……男はヴィオラを支配していると思っていたが、実はヴィオラ無しでは生きていけない、愛の奴隷になっていたのは男の方だったのだ。その後の人生を送る男はまるで生きる屍のようだった。 fin