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緊縛
第6章 短編 緊縛6
「凄くよかったよ」

 監督の声も私の耳には届かない。

 思わず店長をみると、私に見せつけるように、指先を淫らに舐め、ぞくりとする笑みをみせた。

「どうしたの?」

 魅入られるように店長を見ていた私は、思わず監督の声に我に返った。

 誰も店長の淫らさに気づいていないんだ。

 座り込んだ私を心配するスタッフは、私を取り囲んで、先ほどの店長を誰もみていない。

 恥ずかしいぐらい疼いて仕方がない。

 あの、ぞくりとする店長のいやらしい眼つき。

 これが撮影じゃなかったら、私は、どうされていたのだろう。

「次のシーンは大丈夫?」

 ぼんやりする私に、監督が心配して声をかけてくれた。

「はい」

 私は何事もなかったように笑みを浮かべた。

「初めての緊縛は緊張するからね」

 監督の声に頷きながら、他の緊縛シーンは違う縄師が縛ってくれた。

 店長は黙って縛られていく私をみている。

 先ほどのことが嘘のように、周りのスタッフと談笑している姿は、いつもの店長だ。

 一つの縛りができると、私は淫らさを彷彿させながら色っぽくカメラを見つめながらも、あのぞくりとするほどに、身体が疼くような淫らさは、どの縄師からも感じとることができない。

 撮影が終わり、周りのスタッフにお礼を言うと、その場で別れた。

 監督は、「また、撮影ができたらいいな。凄くよかったよ」と、私を褒めてくれた。

 周りのスタッフと解散して、駅に向かおうとしていたとき、ふと肩を叩かれた。

「ご飯食べに行こうか」

 呼び止められた店長の声に、思わず目を伏せた。

「急いでいますので」

 足早に立ち去ろうとする手を店長は、しっかりと掴んだ。

「セックスより気持ちがよかっただろう?」

「やめてください」

 しっかりと掴まれた店長の手を振り払おうとするが、店長は私を力強く引きよせた。

「離して」

 嫌がる私を店長は強引に抱きよせると、無理やり助手席に押し込んだ。

「やめて」

 疼いて仕方がないところに店長の手が伸びてきた。
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