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緊縛
第7章 短編 緊縛7
 店長の手を強引に押し返し、私は車内で激しく抵抗すると、車から飛び出した。

 怖い。

 どうしていいのかわからないほど怖くて私は走り逃げようとする。

 車内から飛び出した私の腕を掴むと、背後から店長に抱きしめられた。

「驚かせてごめん」

 ぐっと店長に抱きよせられた私は、どうしていいのかわからず涙がでてきた。

 向かい合うように店長は私を抱きしめなおすと、優しく、力強く抱きしめてくれる。

 抱きよせられた店長の腕の中で、私は、どうしたらいいのかわからない。

 店長は、泣くばかりの私の涙を拭うと、頬に、くちびるをよせた。

「セックスがしたいわけじゃない」

 好きって言ってくれないんだ。

 わかっている。

 どんなに好きと言われたって、今まで付き合った男性は、数回セックスをすると、興味が失せたように、自然と離れていった。

 好きと、すいませんは、私には都合のいい言葉にしか聞こえない。

 それ以上に、私を抱きしめてくれる店長の本当の気持ちがわからない。

 あの、ぞくりとする淫らさと、私を優しく包んでくれる温もり。

 店長からしたら、私なんて、子供を騙すほどに簡単なことなのかも知れない。

「セックスがしたいのは本当だ。だけど、もっと美咲を淫らにしたい。淫らにさせることが、どんなセックスよりも好きなんだ」

 店長の言っていることが、まったく理解できない。

「変わっているとよく言われるよ」

「でも、セックスがしたくなったら、するんでしょう。淫らにさせると言っておきながら、セックスさせたくするだけじゃない」

「違う。信じてくれ。縄は最高のエロスだ。本当のSMにはセックスはない。だけど俺だって男だ。縄を使ったセックスだってしたい。縄を使ったセックスで美咲を狂わせてもみたいとも思う。だけど今は、違うんだ」

 これがアブノーマルな世界なのだろうか。

 確かに、店長をみていると、普通の男性とは大きく違う。

 私は、お金欲しさで、なにも考えず、イメージ撮影までした。

 だけど、この世界を理解して、好きで入ったわけではない。

 イメージ撮影が終われば、接客が始る。

 ソープランドの想像はできてもSMの世界は、蝋燭と鞭ぐらいしか思い浮かばない。
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