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緊縛
第8章 短編 緊縛8
 店長は車を走らせながら、「なにか食べたいものある?」と聞いてくれたが、あまりの緊張に、なにも食べたくない。

「店長は?」

 思い切って店長に話しかけると、くすぐったそうに笑い、「美咲」と言った。

「どこか行きたいところある? 俺が連れていく場所が気に入らなかったら困るしな」

 こうして話す店長は、いつもと変わらない優しい店長だ。

 黙って俯いていると、車は山中に向かいだしていた。

 どうしよう。怖い。

 でも、行きたい場所も思いつかなければ、セックスがしたいだけなら、どこだってセックスはできる。

 店長がその気になれば、車内で強引に関係を求められてレイプされることだってある。

「美咲。変なこと考えているだろう」

 思わず俯く私に店長は笑みを向けてくれた。

「時々来るの?」

「覗きにね」

「覗き?」

「よく、野外でカップルが楽しんでいるのを覗きには来るよ」

「嘘。本当は色々な女性を連れて来ているんでしょう」

 店長は笑いながら、「嬉しいな。なんだか焼きもちを妬かれているみたいで」

 上手く店長に誤魔化されたのだろうか。

「なんでそう思うの?」

 私は店長の声に思わず顔を赤らめた。

 あの身体が疼いて仕方がない指先や舌先。多くの女性遍歴を語りかけているようにしか思えない。

「よし、コンビニによって行こう。トイレも念のために行っておこうか。美咲の恥ずかしいところ見せてくれるなら嬉しいけどな」

 私は俯いたまま、なにも店長に聞けなかった。

 店長なら素敵なひとがいても可笑しくない。

 助手席のドアを店長が開けてくれた。

 戸惑いながら降りると、店長は辺りも気にせず抱きしめてくれた。

「美咲だけだから」

 憎らしいほどのプレイボーイだ。

「やだな。その目、俺を信じてないだろう」

 店長は私の手をしっかり握ると、コンビニの店内に歩いていった。

 そこで、トイレに行くと、数本ドリンクを買って、また車内に乗り込む。

 車は迷わず、目的地に走り続けるばかりだ。

 どんどん車は山深いところに入り込んでいく。
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