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eyes to me~ 私を見て
第48章 鮮烈なデビュー①
「お前……好きな子が震えて泣いてるのかも知れないんだぞ……
放って置いたら……今に、他の奴に取られちまうぞ――!
それでお前はいいのかよ――綾波!」
祐樹は良く通る声で叫ぶと、背を向けて唇を震わせる。
「祐ちゃん……」
菊野は涙を拭い、ベッドを振り返ると、口を大きく開けて立ち尽くした。
閉じられていたままだった綾波の瞼がピクリと動き、唇が何か言いたげに震えている。
「剛さん――!」
「!?」
三広と祐樹は振り返る。
電話していた亮介も目を丸くして、スマホを持ったまま綾波を注視した。
菊野は綾波の手を握り締めて叫ぶ様に語りかける。
「剛さん?剛さん!起きたの……?起きてるの?」
綾波の切れ長の瞳がゆっくりと開けられた。
寝ていた野村もいつの間にか起き出して、皆で綾波を覗き込んでいる。
綾波の黒目がゆっくりと辺りを見回すと、やがて焦点がはっきりとして皆の顔を順番に見た。
「何だ……お前ら……揃いも揃って泣きそうな顔をして…………何か……あったのか?」
低い、どこか皮肉な響きをもった声ではっきりと呟く。