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eyes to me~ 私を見て
第54章 擦れ違う恋人たち




 綾波は、美名が出ていったドアを見つめノブを掴もうと手を伸ばしかけるが、重りがぶら下がりでもしているかの様に右手が言う事をきかず、唇を噛み締めてドアから顔を背けた。
 リビングから啜り泣きが聴こえて来て、身体の中身全部を握り潰されている様な痛みを覚えた。

「美名っ……」

 菊野との過去を、ほなみには打ち明けた事がある。
 ほなみの時には打ち明ける事に何の躊躇いも無かったのに、美名にいざ話すと決めてから、何故か躊躇の感情が現れて、先伸ばしにしている内にこんな事になってしまうとは。
 こんな最悪で残酷な形で知る事になった美名は、もう自分を軽蔑の目でしか見なくなるのだろうか。
 綾波はこめかみを押さえ、ベッドへ腰掛けて虚ろに壁を見つめた。



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