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eyes to me~ 私を見て
第54章 擦れ違う恋人たち

菊野の十一年前の言葉。
『次に……逢う時……剛さんに本当に心から愛せる人が出来ていたら……
私は……今……それを一番に願っているわ』
あの時には、この言葉がとても残酷に聞こえた。
だがあれは菊野の最大の愛情であり優しさだったのだ。
美名に出会い、初めて愛し愛される幸せを知った様な気がした。
美名が、自分のただ一人の女なのだと思っていた。
その幸福に酔う一方で、過去に罪を冒した自分が果たして幸福になれるのか、そして美名を不幸にしないか、そんな思いが常に頭の中には存在していた……

