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eyes to me~ 私を見て
第54章 擦れ違う恋人たち

美名の瞳がまた涙で盛り上がるのを見て、綾波は顔を歪ませた。
真理は腹を押さえて立ち上がると、美名を後ろに庇う様にして綾波にニヤリとする。
「ま、真理くん」
「……お前は黙ってろ」
二人のそんな会話を見て、綾波の胸の中が激しい痛みで埋め尽くされた。
――美名の心はもう完全に離れたのだろうか。
もう、いっその事自分はとことん憎まれたままの方がいいのだろうか――
鈍い頭痛に襲われ、昨夜の様に泣き出してしまいそうだった。
だが精一杯の虚勢を張り、冷たく言い放った。
「……俺より真理に乗り換えるつもりなら……それはそれで構わん。勝手にしろ……
ただ……お前のいやらしい身体を真理が満足させられるか……見物だな」
「――!?」
美名は、信じられない、と言う表情をしてその場にへたり込む。
「この野郎!」
真理が綾波に掴みかかろうとした時、もう1つのエレベーターがチンという音と共に到着した。

