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eyes to me~ 私を見て
第58章 歌姫を見守る獣


 未菜の大きな目が更に開かれて、揺れた。
 増本はその色を見逃さずに射るように見つめる。
 未菜は目を瞑り俯き肩を震わせた。

「未菜――」

 泣き出すかのように見えた未菜は、笑い出した。

「アハハハ……あんた……バカ?何をいい気になってんのよ……はあ?」

 未菜は、右足で床を強く蹴った。

「未菜……僕は」

 増本が美名を抱えたまま近付く。
 西野は一歩下がり嘲りの表情を向けた。

「あんた何様よ……私にそんな……どうせ……社長に逆らうつもりもない……ヘタレの癖にっ!」
「未菜っ……」

 増本は青ざめて絶句し、俯いて何かを言いかけるがまた口を結ぶ。

「あんたは私の言う通りにしてればいいのよ……
 女を抱きたくて仕方ないって、その顔を見てればわかるわよ!
 ……せいぜい今夜は楽しめば?……ほら、車が来てるわよ!早く!」

 未菜が吐き捨てる様に言い店から早足で出て行くのを、増本が追い掛ける。

「未菜!」

 未菜が振り返った。
 その目には怒りとも悲しみともつかぬ動揺が見える。

「未菜……僕は……僕が……欲しいのは……女の身体じゃない……」
「増ちゃん……?」

 未菜の唇の端が僅かに上がり、その瞳は水分を湛えて盛り上がる。
「僕が、僕が欲しいのは……っ」


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