この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
eyes to me~ 私を見て
第58章 歌姫を見守る獣

未菜の大きな目が更に開かれて、揺れた。
増本はその色を見逃さずに射るように見つめる。
未菜は目を瞑り俯き肩を震わせた。
「未菜――」
泣き出すかのように見えた未菜は、笑い出した。
「アハハハ……あんた……バカ?何をいい気になってんのよ……はあ?」
未菜は、右足で床を強く蹴った。
「未菜……僕は」
増本が美名を抱えたまま近付く。
西野は一歩下がり嘲りの表情を向けた。
「あんた何様よ……私にそんな……どうせ……社長に逆らうつもりもない……ヘタレの癖にっ!」
「未菜っ……」
増本は青ざめて絶句し、俯いて何かを言いかけるがまた口を結ぶ。
「あんたは私の言う通りにしてればいいのよ……
女を抱きたくて仕方ないって、その顔を見てればわかるわよ!
……せいぜい今夜は楽しめば?……ほら、車が来てるわよ!早く!」
未菜が吐き捨てる様に言い店から早足で出て行くのを、増本が追い掛ける。
「未菜!」
未菜が振り返った。
その目には怒りとも悲しみともつかぬ動揺が見える。
「未菜……僕は……僕が……欲しいのは……女の身体じゃない……」
「増ちゃん……?」
未菜の唇の端が僅かに上がり、その瞳は水分を湛えて盛り上がる。
「僕が、僕が欲しいのは……っ」

