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eyes to me~ 私を見て
第58章 歌姫を見守る獣

綾波達を乗せたタクシーは、あっと言う間も無く走り去った。
「未菜……大丈夫か」
増本が大きな身体を屈めて未菜の腕を掴み起こす。
未菜の白い手が鋭く頬を打った。
「くっ……」
口の中が切れて、苦い味が広がる。
未菜は燃える様な瞳で睨み、突き刺す如く言葉を投げた。
「役立たず!」
「未菜――!僕は」
増本は血が滲む口元を拭おうともしない。
未菜の腕を掴むと、また振り払われる。
「もういい……あんたには頼まないわ!
美名……許さない……この世界で生きてきけなくしてやらなくちゃ、私の気が済まないわ!」
未菜は二人が去った方角を見つめ、やがてニヤリと笑った。

