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eyes to me~ 私を見て
第60章 歌姫の覚悟



 美名の睫毛が震え、瞬きをすると堪えきれず涙がポツリと落ちた。

「――っ」

 着ぐるみの綾波は、この場で抱き締めてやれない自分の不甲斐なさを呪う。

「ごめんね?はまじろうの前で泣かれても困るよね……撮影中なのに……マスカラが取れちゃう」

 美名は、指で涙を掬いはにかむ様に笑った。
 綾波は、ウサギのクッキーに目をやると、店員に向かい手を上げた。
 ピンクのフリルが沢山付いた可愛い制服の若い店員が笑顔でお辞儀をしながらやって来た。

「はい、お客様、お決まりですか?」
「……、……、……っ……!――!」
 
 綾波は、はまじろうの姿でクッキーを指差して、頭を振ったり腰を回したり手を広げてジャンプしたり、身体全体で意思を伝えようと試みた。

「綾……じゃない、はまじろう……何してるの」

 志村が唖然とする。


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