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eyes to me~ 私を見て
第66章 eyes to me~私を見て
綾波は、ステージの光の中、称賛や歓声を浴びる輝く美名を見つめる。
とてつも無く遠い存在に思える程、今の美名はスターそのものだった。
男も女も、虜にする歌姫。
(とびきりの歌姫にする、と言ったのは俺だ……)
美名は、沢山の人間から憧れの目を向けられ、時には恋慕の対象になったりもするのだろう。
(どんな大スターになったとしても……お前は……俺のただ一人の女だ……)
美名が真理に何かを話し掛けられ、抱き締められた。
その瞬間、自分の中の固い殻が崩れるのを感じた。
無意識にステージへと飛び出し、美名の腕を掴むとそのまま走り去った。
すべての光景がスローモーションになる。
自分と美名に向けられた、眩いスポットライトの動きも。
客達が驚きに目を見開いたのも。
ステージの皆が呆気に取られて指差したのも。
何よりも鮮やかに綾波の胸に刺さったのは、美名が振り向いて、その髪が揺らめいた時の金色の輝きや、瞳の涙だった。
手を差し出すと、美名は確かに、自ら手を取って来た―
白く柔らかい手を握り、走りながら綾波は思った。
(一緒に、何処までも行こう――美名――)