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eyes to me~ 私を見て
第67章 エピローグ
心臓どころか、身体の中味がぜんぶ、跳ねている様な気がする。
美名は、一歩も動けそうにない脚を折り、コントロール出来ない呼吸を持てあましながら立ち止まった。
綾波が振り返り、走るのを止め、疲労困憊の彼女を見て吹き出す。
美名は彼を恨めしく睨んだ。
責めたくても、息が乱れて喋れない。
彼の胸にしがみつき動悸が治まるのを待つしかない。
綾波は、肩で息をする美名の髪を撫でる。
どんなに激しく乱しても、するりと収まる艶やかな髪。
奇跡のようだ、と思う。
美名との出会いそのものが奇跡なのかも知れない。
あの夏の終わりの日。
美名と出会った日。
不思議な歌声に誘われ、ずっと遠くから見つめていた。
目を離せなかった。
ほなみに似ていたから――
いや、それだけじゃない。
あの瞬間から、こうなる事を、予感していたのかも知れない――