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eyes to me~ 私を見て
第4章 恋に堕ちた歌姫
綾波は、涙が止まらない美名をギュッと抱き締めて、苦しげに呟いた。
「そんなに嫌だったか……?」
広い胸の中で首を振ると、溜め息と共に胸が大きく動いた。
「わからん反応だな……女の『嫌』だとか『いい』は大抵言葉の裏に何かあるしな……おい」
顎を掴まれて上を向かされる。
「腹が減ったろう。何を食う」
美名はグズグズ泣いていたが、その言葉で急に空腹を意識した。
綾波はベッドから降りてテーブルの上に置いてあるメニュー表をいくつか手にすると、また隣に戻ってくる。
「中華……洋食……丼ものだな……どうする」
綾波は真剣な目付きでメニューを吟味していた。
さっきまでの獣みたいな彼とは全く違う。
「う――む。天津飯……餡掛け炒飯……魚介ラーメン……」
ブツブツ呪文みたいに呟く様子が何だか可笑しくて、つい口元が緩んだ時に鼻を摘ままれた。
綾波は笑顔だった。
「やっと笑ったな」
「……」