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eyes to me~ 私を見て
第29章 優しい獣の腕の中で
泣きじゃくる美名の目の前で、綾波が狼狽えている。
ーー今まで何度も泣いたけれど、その度に暖かい腕と甘い言葉で包んでくれた。
けれど今夜は何かが違う……
綾波は、苦い物を吐き出す様に小さく呟いて彼女を抱き締める。
「すまん……美名……っ」
その腕は小刻みに震えていた。
「自分を止められなかった……お前を憎いんじゃないんだ……」
「うっ……ひっん……」
美名の涙は止まらない。
綾波は、彼女の髪をかき抱き額に唇を付けて痛ましい眼差しで見つめる。
「こんな風にするつもりじゃなかった……
ただ……お前を……抱き締めたかっただけだ」
どんなに優しく囁かれても、美名の悲しみは消えない。
綾波から目を逸らし、口からついて出た言葉は二人の間に決定的な亀裂を生んだ。
「……身体が欲しかっただけ?」
綾波が息を呑むのがわかった。
もう、口に出した言葉は二度と取り消せない。