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eyes to me~ 私を見て
第29章 優しい獣の腕の中で
 真理は、あっ!と口を開けて、取って付けた様な言い訳を並べる。

「いや、だからそーいう厭らしい意味でなくてだな!お前のその髪の毛とか~ぷよぷよした頬っぺたとか~!
 感触が癒されるつーか、そそり立つっつーか……イヤイヤ!ち、違う!」

 大きな手を一生懸命動かして捲し立てる様子が可笑しくて、美名はクスリと笑った。

「うん……分かった……でも、ゴメンね?着替えて来たいから」
「あ、ああ!そうだな!……じゃあ、また後で」

 部屋を出る時に、
 「美名」
 と呼び止められ振り返るとチュッと軽くキスされた。
 ほんのり赤い頬を手で押さえて向かいの部屋に戻るが、桃子達は居ない。

(そうだ……シャワーを浴びて着替えよう……)

 荷物から着替えを出して何を着ようか考えていたら、ワンピースも、下着も何もかも綾波が選んだ物だった。
 そして、その服を脱がして居たのも綾波。
 ほんの短い間なのに、余りにも濃密に過ごした二人の時間は、心にも身体にも甘く残酷な痕を遺していた。
 マーガレットのイヤリングを外して放り投げようとするが、どうしても出来ずに手に握り締めたまま泣き崩れた。

『綾波さんなんか大嫌い!』

 投げつけた言葉のとおりに、本当に嫌いになれたら楽になれるのに――
 手の中のイヤリングに、美名の涙がポタリと落ちた。

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