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eyes to me~ 私を見て
第34章 蕀(いばら)を踏みしめる歌姫
どのくらいそうして居ただろうか。
美名は鼻を啜り、顔を上げずに綾波の胸からそっと離れた。
「……ごめんなさ……」
綾波のシャツもネクタイも、涙で濡れてしまっている。
(つい、甘えて泣きついてしまったけれど、綾波さんにとって私は迷惑でしか無いの?)
怒ってるだろうか……
恐る恐る顔を上げると、優しい瞳があって、息が止まりそうになる。
髪を指でくしゃり、と綾波に乱され、涼やかな声が耳元でした。
「もう、涙は出ないのか?……まだ泣きたいなら、胸を貸してやる」
「……!」
頬が熱くなり、また涙が溢れてきた。
「良く泣く奴だな……」
綾波が"おいで"とでも言うように、両手を広げた。