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eyes to me~ 私を見て
第34章 蕀(いばら)を踏みしめる歌姫
泣き声が漏れないように、水を目一杯蛇口から出して誤魔化しながらしゃくりあげた。
次から次へと涙が溢れては流れる水に混じり堕ちて行った。
美名は、改めて確信してしまう。
綾波が好きだ。
やっぱり、嫌いになる事など出来ない。
優しい真理に抱き締められていても、この思いを消す事は出来なかった。
綾波の心が無いとしても。
どんなに冷たい言葉を浴びせられても。
(綾波さんが好き……綾波さんだけが好き……)
「うっ……」
堪えきれず、美名はうずくまる。
(綾波さんが私に望むのは“とびきりの歌姫"
決して、私自身では無い……
けれど……
私が歌を歌って、綾波さんが喜ぶなら。
さっきみたいに笑ってくれるなら……)
「誰にも負けない……とびきりの歌姫になる……あなたの為に……」
美名は涙を拭い、天を仰ぎ呟いた。