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eyes to me~ 私を見て
第35章 ガラクタと歌姫と

二人は、慌ただしく支度して部屋を出てエレベーターに乗った。
美名は鏡を見ながら髪を直す。
「昨日と同じ服で……思いきり朝帰りってバレちゃう」
「俺のマンションで着替えてけ」
「……て、服を全部送ってよこしたのは綾波さんじゃないの!」
「ああ……だったな……じゃあ、お前のアパートまで取りに行こう」
「取りに……て、また私をマンションに連れ込む気っ?」
「何か問題があるのか」
顔の横に両手を突いて妖しい目で覗き込まれてドキリとするが、エレベーターが階下へ到着すると、美名は素早く逃げた。
綾波がフロントで会計をする隙に、外へ出て陰に隠れ、出てきたら脅かしてあげようとワクワクして待つ。
彼が出てきた瞬間、両手を広げて
「わ――!」
と飛び出すと、そのまま抱きすくめられてしまった。
「あ………綾波さっ」
「こんな古典的な手にひっかかると思うか?」
「う……」
綾波は涼やかに優雅に笑うと、抱き締めたままキスをした。
それは幸せな瞬間……
二人は知らなかった。
その時、何処からかその瞬間をカメラに捉えられていた事を……

