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第38章 恋するcherry　soda

　綾波のピアノに合わせて歌っていた時に撮ったアップだった。
　感情が開放されて瞳は輝き、美名の持つ可愛らしさやいじらしさが顕れて居る様なワンショットだった。

｢本当だ……いいね｣
｢これは、一目惚れする奴がいるかもな――っ｣

　二人が絶賛する中、綾波も目を細めて頷いた。
　ミュージシャンを扱う音楽雑誌を手に取る人間は、そのバンドを知らなくてもビジュアルやインタビューの記事を見て"このバンドはどんな音楽を奏でるのか"
　想像と妄想を働かせる。
　写真と文字で音楽を表現して伝えるのは難しいが、ライター達は自らの経験を元に、知識や感性をフル回転させて記事を書く。
　読者の興味を引く物を書くには自らがそのミュージシャンに惚れ込む必要がある。
　プリキーの記事を見ていると堺が心底プリキーに惚れて、期待しているのが伝わってきた。