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eyes to me~ 私を見て
第42章 愛欲の塔で
健人はそんな二人を影から見ていた。
「ふう――ん……なんか、兄貴のまわりは、ややこしや~だねえ……」
大室の名前を出して、美名の部屋を荒らす指示をしてきた男……
フードを被り、サングラスとマスクをかけていて顔は判別出来なかったが……
あの声。
低いけれど通る涼やかな声……
訓練された様な強い声。
今日のパーティーに潜り込んでいた健人は、ある違和感を拭えなかった。
あの声に似た歌声を、この耳で聞いたからだ。
「まさか……あいつ……か?」
健人の目が輝いた時、スマホが鳴る。
「もしもっし!こちらライオン丸!……ああ、そうだ……今からある場所へ行ってくれんか?
俺も向かうから……よろしく頼むぜベイベー!」
スマホを胸ポケットにしまいタクシーを見やるが、待ち客の列に閉口した。
綾波達は先に向かっている。
「……ええい!走った方が早い!
ライオン丸――発進――とうっ!」
健人は袖を捲り、腰を落として片膝と両手の人差し指を地面に付け、前を見据えると一気に走り出した。