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eyes to me~ 私を見て
第44章 デビュー前夜

「ま……真理くん!降ろして」
真理は、美名を抱えたままエレベーターでなく階段を駆け下りた。
美名が怖がってしがみついてくると、真理の胸が熱くなる。
ほんの一時、今だけでも、美名を抱き締めて走っていたい。
綾波が元通りになるその時までは、自分が一番に守っていたい、と強く思った。
自分は、綾波に目覚めて欲しいのか、そうでないのか――
そんな葛藤が真理の中で渦巻いていたが、車に乗り込みセルを回し、時計で日付が変わった事を確認した時、唇をキッと結んだ。
(……今は、デビューの日をミュージックスタイルで飾る事をだけを考えよう。
美名を演奏でサポートするんだ……)
「いよいよ今日だな、美名……」
車を走らせながら、横に話し掛けると、美名は寝息を立てていた。
記念すべきデビュー当日。
何者かの黒い企みが、プリキーの周りに蠢いている事を、この時誰も知らなかった。

