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曖昧なままに
第13章 忌むべき過去(愛美の独白)
うん……。
私は言葉でなく、目でその意志を伝える――。
怖くなかったと言えば、大嘘つきだ。彼のそれまでの行為は総じて、優しいものでもないのだろう。荒々しく無遠慮で、壊されてしまいそうで……。
でも……だけど……きっと……それでも……いい。
たぶん――それが男なのだと、彼は示してくれている。
ならば、私は――――女になってみせるだけ。
その先のことは、嵐に巻き込まれたような感覚として、私の中に刻まれていた。
ん、くっ……いっ、たぁ……んんっ、あ……あっ…………はぁうっ!
ごりごりっ、と掻き分け、押し分けて。私の中を貫き刺す――熱さと痛み。その進撃が止まり、受け止めたと実感するも束の間のこと。一呼吸於いた後に始まる、打ち寄せる波のような猛りが――。
その突き上げの度に、私の小さな身体はずんずんと押され。それでも私を追って逃さず、更に押し込み続ける。その時に畳に擦れた背中のヒリヒリとした痛みが、少し余計で煩わしかった。
するとやがて――
ううっ……くっ……………………あ!
それは耐えるだけの時の中に、訪れていた奇妙な感覚。私の奥底に生じた微かな熱が、彼の熱さに応えたようで。快感などと呼べるものではなくても、彼と繋がったとの実感に――私は初めて喜んでいた。
圧倒的な痛みの中での、微かな感触に心を寄せると――。
彼もまた一層に、激しく押し寄せていた――。
ついに……終わる。私が、そう思ったまさに――その瞬間だった。
あ!? だめ――よして――――――――――――――――――おかあさん!
彼の背後――。
そこに立つ――母。
どんよりと暗い――眼差し。
振り上げた――両手。
そこに携えた――花瓶。
「いやあああっ――!」
――――ガツンッ!
あ……あ……!?
その衝撃に――光を失う彼の瞳。その刹那――
ビクンッ!
私の体内で――彼は射精していた。
――ドサッ。
そして、力尽きるよう――彼の身体が、私の上に折り重なると――
シバ……ザキ……さん……?
それを最期に――――事切れた。