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Dolls…
第11章 人形の瞳は…
アーティスト。
絵を描きたくて東京に出て来たんだ。
絵描きだってアーティストみたいなもんだ。
それに、椎葉さんが人形師というのも嘘じゃない…。
嘘じゃないけど…。
私専用の部屋まで用意されて、私専用のドレスまで用意されていて、ここまで何もかも用意されているのだから住み込み、という事にしとかなきゃ辻褄が合わなくなる。
本当の事を告げようとしたのに、真実を織り混ぜながらも私は嘘を付いた。
助けを求める事をせず、私を探しに来てくれたシュウちゃんに嘘を付いた…。
雨に濡れて、田舎からこんな山奥にまで私を探しに来てくれた幼馴染みのシュウちゃんに嘘を付くのは心が痛くなった。
…やっぱりシュウちゃんに全てを話すのはまだ怖かった。
「だったらせめて連絡ぐらい寄越せよ!マジで消息不明だと思って焦ったじゃねぇか…」
「う、うん…、勉強に夢中になっちゃって…、ごめんね…」
そう言いながら、自分の足元を見るかのように視線を少し下げながらシュウちゃんの隣を歩いた。
嘘を付いてる罪悪感からかシュウちゃんの目がマトモに見れない。
私、どうして━━━━━━っ
ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ…。
助けを求めれば助かる場所に私は立ってる。
シュウちゃんは手を差し伸べて助け出してくれる。
ここまで来て恥ずかしさなんて感じてる場合じゃない。
全てを話せば私は助かるのに…、それが出来ない。
シュウちゃんに、全てを知られるのが恥ずかしいし情けない。
ここで私がされて来たこと、シュウちゃんにだけはどうしても知られたくなかった。
「これでお前の両親も安心するよ」
「う、うん…。宜しく言っといて…」
でも、私は…
私は…
シュウちゃんに助けを求めないのは、本当にそれだけなのだろうか?
本当に、ただ恥ずかしいだけ…?