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Dolls…
第26章 Dolls…
これが、私の毎日。
憧れだった美大へ入学したはいいが、私には人に言えない秘密がある。
そして、この秘密が人に漏れればあの人はたちまち好奇の目に晒される可能性がある。
だからこうやって、誰にも見つからないように、なるべく目立たないようにあの人の元へ帰らなければならない。
私とあの人だけの秘密の巣に。
茜のマンションから引き返し私は電車の駅に向かった。
ここから電車を乗り継いで、各駅停車に乗り換えてあの山の麓の街まで行く。
そこから先は徒歩。
そうしたいと言ったのは私なのだから特に辛くはない。
それどころか私の足はウキウキしていて今にも空を飛びそうなぐらいだ。
麓の街に着く頃には辺りは真っ暗。
この時期は日が沈み真っ暗になるのは早い。
山の麓だけあって厚着をしていても肌寒さを感じてしまう。
しかし、私は寒さを堪えながら山の方へと歩いていく。
山の中へ入ろうとする、そんな私の姿を井戸端会議中の主婦達が珍しそうな目で見つめてくる。
その目線にももう慣れた。
「ねぇ、あの子山の方へ歩いて行こうとしてるけど、どこの子かしら?」
「さぁね。1年ぐらい前からこの付近で見かけるようになったから最近引っ越して来たんでしょうけど…。美大に通ってるとは言ってたけど…」
「でも、美大って言ったら都心の方でしょ?わざわざこんな山の麓の街に引っ越して来たの?まぁ、この辺は賃貸の家賃も安いだろうけど」
3人の主婦達が私の姿を見ながら何やらヒソヒソと話している。
だけど、私もあの人達と必要以上の関わりは持たない。
最低限の会話しか交わさない。