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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第4章  【弐】
 自分は何と言われても構いはしない。しかし、生真面目な父や何より世間体を気にする母にとっては、あの酷い噂はこたえているだろう。現に父は娘の橘乃が藩主の愛妾となった時点で、三十石から二百石へと破格の加増を申し渡された。むろん、藩主直々の命である。
 だが、父はそのありがたい命を謹んで固辞した。
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