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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第4章 【弐】
―お方さま、どうぞ構わずお進みなされませ。あちらは、同じご側室とはいえ、とうに殿のご寵愛を失うて久しいお方、今、時めくお方さまの足下にも及びませぬ。ここは、お方さまがお先にお通りあそばすのが筋というものにございましょう。
しかし、橘乃は躊躇った。側室という立場ではあっても、橘乃にせよ、琴路にせよ、まだ御子をなしたわけではない。いわば、お手つきの腰元というだけで、正式な側室として認められるのは殿の御子をあげてからの話なのだ。