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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第4章  【弐】
 侍女の声音には明らかに咎めるような響きがあった。
―何をたわけたことを仰せになられます。こちらのお方をどなたと心得る。琴路さまにございますぞ。同じご側室同士ならば、先にお側に上がった琴路さまこそ、先にお通しするべきにございましょう。
 琴路に付き従っていた侍女も声を荒げる。
 まだ何か言おうとする侍女に橘乃は耳打ちした。
―もう、良い。ここは穏便に済ましましょう。
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