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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第4章 【弐】
その夜のことである。橘乃は自室で一人、脇息に寄りかかっていた。最近、どうも身体の調子が思わしくない。胃の具合でも壊したのか、気分が悪くて日に何度も吐きそうになる。当然、三度の食事もろくに喉を通らず、殆ど手付かずで返す状態が続いていた。
「お方さま。お加減はいかがにございますか?」
膳を下げにきた侍女の浪江が気遣わしげに問うてくる。既に四十近い浪江は、橘乃の母親ほどの年齢だが、橘乃の身を心底から案じてくれる頼もしい味方である。