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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第5章 【参】
 そこに、橘乃の誤算があったといえよう。
 愛されて育った者に、愛されなかった者の気持ちが判らないのは至極当然のことだ。
 嘉宣はひそかに遣いを立て、下屋敷に遣わした。
―今後、橘の方に手出しは無用。
 ただひと言、そう告げるように命じた。春瑶院は愚かな女性ではない。それだけで、今後、橘乃に手を出せば、嘉宣がどう出るか判らないと言外にほのめかしていることに気付くはずだ。
 それで十分だと思った。
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