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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第5章 【参】
「つまり、それは将軍家のお抱えになる伊賀者、甲賀者―お庭番と同等の役目を果たすものだと?」
「流石は橘乃だな。頭の回転も知識も並ではない」
 橘乃も影の存在は耳にしたことはあった。真の名も明かさず、一生を影のごとく生き、また影のように消えて終わるのだと、そのような者が実在するのだと、父が語ったことがあったのだ。
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