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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第6章  【四】
「橘乃はどうしておろうな。この寒さでは、身重の身にはこたえよう。俺のことは構わないで良いから、橘乃のことを気に掛けてやってくれ」
「―」
 玄馬から、いらえはなかった。
 ただ眼を伏せているだけだ。
 その時、嘉宣の中で違和感が生じた。
 いつもなら、〝橘乃はどうしておるか〟と問えば、必ず苦笑しながら〝お変わりございませぬ〟と応えるのに、今日は何故、何も言わない―?
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