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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第4章  【弐】
 幸之進だけではなく、家中の誰もが橘乃をそんな眼で見ているのを知らぬわけではない。確かに、言われるとおりかもしれない。
 橘乃を側に置くようになって、嘉宣は変わった。橘乃と夜中どころか昼近くまで寝所に籠もり、淫らな行為に耽っている。当然、政(まつりごと)もなおざりになり、表より奥に入り浸っていることが多くなる。
―殿を色香で誑かし、籠絡し堕落させた妖婦。
 それが、今の橘乃に対する見方であった。
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