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脱出小説
第9章 5
「そこまでだ」
差し伸ばした私の手を取って安戸が言った。
あれだけ嫌がっていたのが嘘のように、安戸を求めてしまっていた。
そのことに気づいて私は愕然とする。
「卑怯よ……テレパシーで操って無理矢理なんて……」
「申し訳ない。だが、しかたありませんでした。これでもう大丈夫です。最悪の事態は追いやられる」
安戸の言葉はまるで意味が分からなかった。
「追いやられる?」
「ええ、私の能力でね。いや、私一人だけではありません。君たちの協力があってこそでした」
何を言っているの……。
もう時間なんか残っていないのに!
もう皆、破滅だというのに!
「純、大丈夫だ。俺は安戸さんの心を読んだ。もう大丈夫なんだ」
「二人とも何言ってるのか全然わかんないよ! 私たち、もうお終いよ!」
「大丈夫ですよ。並べ替えてしまいますから」
「並べ替える……?」
またわけのわからない事を言う。
そんな問答をしてる暇なんかないのに。
だって、もう……時間が……
それなのに、安戸は悠長にまた意味不明な事を呟いた
「サブロー氏とうに救護ナッパ」
「何ですか、それ?」
「語呂合わせですよ3641029578(サブローシトウニキューゴナッパ)数字を覚えるのは苦手でね」
「数字?」
「ええ。言ったでしょう……貴女と同じだって。貴女が地面や壁の中にテレポートできないのと同じで私にも制限はある」
数字が何の関係があるのだ。
「そして、今のあなたとのキスでギリギリ何とかなりそうです。繋がりました。苦しいですが……」
もう、全然わからない。
安戸はきっと狂ってしまったに違いない。
泰人もだ。皆、絶望でどうかしてしまったのよ。
ああ、そんな謎々みたいな問答をしている間に、もう……
「心配要りませんよ。貴女はそう思い込んでいただけなんです」
もう時間が……