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最後の一色
第19章 最後の一色を足す日
最後の日。

とうとう、終わる。

裸婦画のモデルの仕事が。
アトリエ・涼風に通うことが。そして・・

涼輔と会うこともなくなる・・
それが何より悲しい、と、地下鉄の窓の外の黒い壁を必死に睨み付け、涙を我慢した。


昨日の帰り際、早めに来てほしいと言われた。
いつもよりも1時間早いとさすがに混雑に体が押される。
まだ通勤ラッシュの名残があり、そのざわつきに涙はいつの間にか納まっていた。



「おはようございます」

こうして挨拶しながら勝手にアトリエに上がり込むのも今日で最後。
食材を冷蔵庫にしまいこむのも最後。
エプロンを身につけ、こじんまりとした家の中を掃除するのも最後・・

寂しさに覆い尽くされて、再び涙がこみ上げるのを必死に抑えながら明るく振る舞い、
エプロンを身につけようとした時、
後ろから涼輔に抱きしめられた。

手にしたエプロンは床に放り投げられ、美紗緒の体を返すと隙間なく唇を重ねた。

涼輔さん・・嬉しそうに喘ぎながら何度も名を呼ぶ美紗緒を抱え上げ、
そのまま寝室へ、そしてベッドの上に美紗緒の身を横たえた。

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