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タンバリンでできたオーロラ
第13章 星の王妃さま
「おさらばですぅぅぅぅ。王妃さま、ありがとうございました……お達者で~!」
王妃さまは達した余韻の中で、かつてない充足感を味わいながら、ロケット雲を筋ひいて、小さく、天に吸い込まれてゆくその果実を見送りました。
「わらわも満足であった……そなたも達者で……」
王妃さまの美しい目じりに浮かんだ涙は、絶頂のためのものなのか、それともパイナップルとの別れを惜しんだものなのか。
それは王妃さま自身にもわからないことでした。
毎年11月の中ごろに地球から見ることのできる、しし座流星群。
王妃の星はその方角にあります。
そして、しし座の方向にある無数の星々の、数知れぬ寂しい王妃さまたちは、みなそれぞれに、その頃になるとパイナップルを打ち上げるのだそうです。
地球では多くの恋人たちが、そのパイナップルの描く美しい光の流影に、胸をときめかせ、あるいは口付けの背景とするのかもしれません。
素敵な、素敵な夜の思い出として。
《星の王妃さま 了》