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タンバリンでできたオーロラ
第27章 ヌーディスト課長
あれはなんという名前で呼ばれた裁判だったか。
20年も昔の裁判なので、誰が起こした訴えなのか、どんな判決だったのかすらハッキリと知る人は多くない。
だが、確実に現在の社会の在り方に影響を与えた裁判だった。と、言われている。
俺自身、特に興味があるわけではないので曖昧な知識なのだが、それはある芸術家が、自分の性器をかたどった作品を展示し、猥褻物陳列に問われたことに対する訴訟だったと思う。
「私のおまんこはただの体の一部であり、猥褻物ではありません」
……とか、なんとか。
言われてみれば確かにそう。
だが、よくよく考えてみると果たしてそうだろうかとも思う。
まあ、俺にとって大事なのは事の是々非々ではないので、どうでもいいのだが。
少しだけ自分の考えを述べさせてもらうなら、「俺のちんこは猥褻物ではありません」と言い切るだけの勇気……というか、信念は俺にはない。
まあいいさ。
俺は芸術家じゃないし。
クリエイティブな活動をしているわけでもない。
どちらかというとクリエイティブとは言い難い……ペコペコ頭を下げてばかりのしがない営業職だ。
それだって立派な仕事だし、謙虚であることは善いことだ。
仕事でなくたって腰は低いほうがいい。
とはいえ、自分の性器が猥褻物でないというのは謙虚の賜物というわけじゃない。実際問題、かなり猥褻だと思う。思い知らされている。
そこの所が本題だ。
そう、俺にとって大事な話、というやつだ。
ちょっと聞いてくれないだろうか。