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タンバリンでできたオーロラ
第32章 頭取 権俵金蔵

きっかりと497秒、くだらぬことを必死になってベラベラと並べ立てた所で、ついに美木本が言葉を途切れさせた。
いっかな反応を見せない権俵に対して不安の面持ちで上目遣いとなる。
497秒……約8分30秒。
長くもなく短くもなく。
権俵にとってはなんの面白みもない数字だった。
これまでの最長記録は……これは二時間近くを喋り続けたつわものがいる。
そのときは、途中からカウントを止めて、頭の中でソリティアを100ゲームほどプレイして、それから話を遮った。
実の所、何秒話を続けようとも、それはどうでもいいことなのだ。
ただの趣味だ。長かろうと短かろうと、それで何かを判断するつもりもないのだった。
「あの……頭取?」
美木本が卑屈な顔をして権俵を窺う。

