この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
タンバリンでできたオーロラ
第37章 英雄 ~あるいはコロンブスと卵の話~
商人であり、将軍であり、大提督であり……それよりもっと前は王室お抱えの家庭教師であったこともある。もっとも、彼を偉人たらしめたのはあの発見をおいて他にない。
その偉業を讃えぬ者はいない。今では。
そう、今では、だ。
驚くべきことに、当時、帰還した彼を「新大陸は誰にだって見つけることができた」と謗る者たちがいたという。
そんな者たちに、彼は何と言ってみせたのか――そう、コロンブスの名は、あの「卵の逸話」でも有名だ。
彼は、業績を軽んじる連中に卵を立てることを試みさせた。
難題だ。
丸い卵は平らなテーブルの上で転がるばかり。真っ直ぐに立てることなど誰一人できなかった。コロンブスはそれを見届けてから悠々と卵の尻をグシャリと潰し、テーブルの上に突き立ててみせた。
成し遂げられた後は簡単そうに見えることでも、最初にやってみせることがいかに困難か。そういう教訓として、大人たちが好んで子供に伝え聞かせる物語だ。
大航海の時代など遥か遠い昔のこととなった今の時代でも。
それでも――僕は思うのだ。
コロンブスの卵はそんなことじゃないと。
その偉業を讃えぬ者はいない。今では。
そう、今では、だ。
驚くべきことに、当時、帰還した彼を「新大陸は誰にだって見つけることができた」と謗る者たちがいたという。
そんな者たちに、彼は何と言ってみせたのか――そう、コロンブスの名は、あの「卵の逸話」でも有名だ。
彼は、業績を軽んじる連中に卵を立てることを試みさせた。
難題だ。
丸い卵は平らなテーブルの上で転がるばかり。真っ直ぐに立てることなど誰一人できなかった。コロンブスはそれを見届けてから悠々と卵の尻をグシャリと潰し、テーブルの上に突き立ててみせた。
成し遂げられた後は簡単そうに見えることでも、最初にやってみせることがいかに困難か。そういう教訓として、大人たちが好んで子供に伝え聞かせる物語だ。
大航海の時代など遥か遠い昔のこととなった今の時代でも。
それでも――僕は思うのだ。
コロンブスの卵はそんなことじゃないと。