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らぶあど encore!
第23章 秘密のライヴ
ベースが短いリズムを刻み、ギターがエフェクターを通しキーンと高音を鳴らす。
ドラムスは巧みにバズドラとスネアを交互に烈しく叩きつけて、疾走感のあるグルーヴを作り出す。
史の滑らかなハイトーンボイスが、楽器隊と合わさると、不思議な魅力が産み出される。
快と不快の間――ギリギリの所を突いてくる、音。
英語歌詞が殆どの史の曲は、目を瞑って聴いていると外国のバンドが演奏しているようにも聴こえる。
分かりやすく、ポップな音楽を好む人が多い世の中では、彼の曲は浮くのだろう。
だが、一度聴いたら鼓膜に張り付くような印象的な音は、一部のコアな音楽ファンを惹き付けるかもしれない。
――クレッシェンドの、甘やかで快活なポップさを追及した音楽性とは真逆だが、不可解な魅力をこのバンドに感じる……
キャパ100程の小さなライヴハウスのステージ横で、史が用意してくれたパイプ椅子に座り
「FUMI BAND」の演奏を観ていたほなみは、リズムに乗り指先を膝の上で時折踊らせながらそう思っていた。
隣に立つ景子は、ライトに照らされるほなみの白い頬を見詰め、複雑に心が揺れていた。