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らぶあど encore!
第26章 長い夜③

「……亮介君……亮介く……」
病室のベッドで眠る亮介の手を握り締め、景子はしゃくりあげ、肩を震わせていた。
亮介は、景子を庇い車と衝突して高く投げ出され、アスファルトに落下したのだが、落ちる前に植え込みに身体が当たっていたため、高い所から落した衝撃をモロに受けずに済んで、命に別状はなかった。
ただ、衝突の際に咄嗟に腕を出して身体を庇うようにしたため、右腕を骨折した。
頬に出来た傷を覆うガーゼに滲む血や、接ぎ木をあてられ包帯を巻かれた腕を見て、景子はまた低い嗚咽を漏らし身体を折る。
――一体、私は何をしているのだろう――
史に嫉妬して、ほなみを妬んで、自分がとんでもなく惨めに思えて、あの場に居られなくなって逃げ出した。
ほなみの真っ直ぐな邪気のない眼差しを見ているのが辛くて――
自分に振り向きもしない史の言うがままになり、クレッシェンドに近付いて皆の信用を得て、バンドを、西本祐樹を陥れる機会を窺っている自分。
そんな事とは知らず、親切にしてくれるメンバー、昔からの友達のように気さくに接してくれるあぐりやカナ。
そして、こんな自分を好きだと言ってくれる亮介。
「ごめんね……ごめんなさい……っ」
景子は、安らかな寝顔の亮介に涙ながらに何度も繰り返し語りかけていた。
「――景子ちゃん、いいかな」
ノックと共に三広の声がして、景子は涙を拭って「はい」と返事をした。

