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らぶあど encore!
第31章 運命のメリーゴーラウンド
見知らぬ人びとの笑いさざめきの中であっても、景子と洋平の話し声が史にはその時ハッキリと聴こえてきていた。
景子はまろやかな優しい声で腕の中の我が子に語りかけている。
――ようちゃん……ママね、ようちゃんとまた一緒に暮らせるように……頑張るから……
洋平は少し咳き込み、胸を押さえながらくぐもった、しかし愛らしい瞳を輝かせて気持ち後ろを振り返って言う。
――頑張るって言葉だけじゃ……ダメだよママ……
景子は首をかしげ、困った様に口を歪めた。
――ええ?ダメなの?
――約束……
――え?
――やく……そく……して……また……いっしょに……
史は、感じていた違和感が何なのかハッキリ分かる前にスマホを放り出してメリーゴーラウンドに向かって駆け出していた。
洋平の薔薇色の頬はいつしか土気色になり、眼差しも虚ろになっている。
聴こえていた人びとのざわめき声も、オルゴールの音も消えていた。史は無心に彼らの方へと手を伸ばし叫んだ。
「洋平――!」
その叫びが洋平に届く前に、洋平の小さな身体は力を失い、景子の腕の中へ崩れ落ちた。