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新月
第9章 違和感
「…おはようございます…。」
「なんだい、チヨ坊。そのしけた顔は。」
チヨは美月の朝食を取りに、勝手場に顔を出した。
目の下に隈はないものの、昨日の出来事が頭から離れず、顔色は良くない。
「ごめんなさい。
昨日、あまり眠れなくて。」
そう言いながら、チヨは美月の御膳の準備をする。
食べる物は触れないが、匙や湯呑みは準備できるようになったのだ。
「あまり、頑張りすぎないことだよ。
あんた、ずっと美月様といるのかい?」
「?
うん。そうだよ。
覚えることがたくさんあるしね。」
チヨは不思議そうに答えた。
小母はそんなチヨを見て、溜息をついた。
「最初は大変だろうけど、ちゃんとお休みは休まなきゃ〜。
最近は外に出てないんじゃないのかい?」
小母の心配する言葉を聞いて、チヨはなんだか、気持ちが温かくなった。
「ありがとう、小母さん。
今は美月様のことをなるだけ早く覚えたいの。」
チヨはなんとか笑顔を作り、
小母が用事してくれた美月の朝食を、御膳に並べて両手で掴んだ。
小母は、優しい目をチヨに向けて、
「そうかい。
無理するんじゃないよ。」
と、深い追求はしてこなかった。
チヨはホッとして、
「じゃあ、持っていきます。」
そういって、美月の待つ奥屋敷に向かった。