この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
新月
第9章 違和感
——ドキドキドキドキ——。
段々と、美月の部屋に近づいていく。
(あぁ、わたしはちゃんとした所作で、美月様に挨拶が出来るのかしら?)
昂る気持ちを抑えながら、美月の部屋に行き至る。
ふぅ。
と、息を吐いてから、
「美月さま。おはようございます。
朝食を持ってまいりました。」
いつもの様に、朝の挨拶をした。
そして、何事もなかったように、いつもと変わらず、
「どうぞ、入ってちょうだい。」
美月の声が、部屋の中から聞こえる。
「失礼します。」
チヨは美月の部屋の襖を開ける。
「おはよう、チヨさん。」
美月はチヨの方を向いて、にっこりと笑い、挨拶をした。
そう。
いつもと同じだ———。
チヨは、美月の笑顔に、
言葉に出来ない違和感を感じた。
いつもの美月の笑顔なのに、何か違う。
それはやはり、昨日の夜中の出来事がそうさせているのか、
また、チヨの思い違いかは、わからなかった。
チヨは、この日の美月の笑顔が心に引っかかったまま、
数日、過ごす羽目になる。
そう、もう一度、
美月の密事を聞いてしまうのだ……。